スタウロスのキリスト
 

  1980年 金子治男

162×130cm F100号

この絵は、キリストの刑柱上の姿を表しているが、世に多く見られる、キリストの絵とは異なっている。多くのキリストの絵は、十字架であるが、これは、横木の無い一本の杭、或いは柱である。聖書に出て来る十字架という言葉は、ギリシャ語原本によると、スタウロス、又は、クシュロンから訳されたものであるが、これらの言葉は、横木の無い一本の杭、又は、柱を意味している。これらの言葉が、十字架と誤って訳されるようになったのは、キリストの死後300年程後の事である。ローマのコンスタンティヌス皇帝は、西暦325年頃、バビロンと、エジプトと、ローマの土着宗教をキリスト教と融合し、キリストが十字架に掛かったとしたのである。事実、西暦前何千年もの昔から、バビロンと、エジプトと、ローマにおいて、十字架崇拝が行われていたのである。十字架は、太陽神の象徴であり、真のキリスト教とは全く無関係のものである。従って、十字架をキリスト教の象徴としたり、崇拝の対象とする事は、真のキリスト教に反するものである。なぜならば聖書の中には、いかなる偶像をも崇拝してはならないと、書かれているからである。私は正確な歴史の事実と、キリストの死の意味を全人類に知らせる為に、この絵を描いたのである。聖書によると、キリストは良い実を生み出す葡萄の木に喩えられている。鷲は高い見地からの知恵の象徴であり、牛は力の象徴である。そして、キリストは、ユダ族のライオンとも言われ、それは正義の象徴であり、神の王国の王としての法的権利を有している。キリストの頭上には、ヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語にて、「ユダヤ人の王ナザレのイエス」と書かれている。七つの頭をもつ蛇は、この世の支配者であり、七つの世界強国を操っていた、悪魔サタンを象徴的に表している。そして、このサタンは、キリストのかかとによって頭が砕かれるのである。サタンの頭が砕かれる事によって、この邪悪な世界の終り来て、神の王国の支配による、真の世界平和が訪れるのである。キリストの刑柱は、処刑された場所である中東のイスラエルから突き出ている。地球を描いたのはこの出来事が宇宙的な出来事である事を表している。キリストの殉教という出来事は、全人類の罪のあがないであり、人類の罪が許され、永遠の命が与えられる為には、凡ての人はこのキリストのあがないを受け入れなければならないのである。